可変する1.8mの軒下

建築物データ

所在地 新潟県新潟市東区
建築用途(種別) 住宅[新築]
延床面積 111.79㎡
木材データ 木材使用量22㎥
コンペ応募年度 2022年

応募者データ

名称
塚野建築設計事務所(有限会社塚野設計)[設計]
住所
新潟県五泉市熊野堂5262-1
電話
0250-58-3946
FAX
0250-58-1226
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「森や木」への想い

山があり、木があり、川があり私達の生活があります。「生活が自然のサイクルと共にあると感じながら日々を過ごすこと」、「その地域の木や石と共にそこに住むこと」は、とても豊かなことです。木に限らず地域の土や石を住まいに取入れたいと考えているのでクライアントと価値観を共有するための時間を大切にしています。

当該建築では構造材をほぼ新潟県産の杉の無垢材を使用し、外壁も杉板の下見張りとなっています。杉の構造材を合理的に取り入れるために構造計算と家のカタチや間取りを同時進行で検討しています。また、将来家が大きくなったり小さくなったり可変する可能性を残した設計となっているため、可変する際に意匠的調和をとりやすいように、いつの時代でも入手可能な杉板の外壁としています。

「地域」への想い

建設地は昭和30年以降に住宅地として急速に発展した地域で、古い建物が多いけれど利便性が良いことから土地が空くと新しい住宅やアパートが建ち、ゆるやかに新陳代謝しています。計画した建築もゆるやかに変わって行く「新しい」と「古い」が共存する街に適応するように接道方向は軒高さを抑え、杉板の外壁として新しくも古くも見えないファサードとして、前からそこにあったような佇まいを目指しました。経年変化する杉板の外壁を豊かだと感じ、経年変化を前向きに捉えることが出来るように、クライアントとの価値観の共有に時間をかけた甲斐があり、建築の佇まいを近隣の方にも好意的に見ていただけているようで嬉しく思っています。

「建築」への想い

建築が街の新陳代謝と、将来の家族構成の変化に適応しながら豊かな場所であり続けてほしいという願いから、可変する可能性を残した計画としました。具体的には、敷地の幅いっぱいに、タープを張るように屋根を掛け、南北の土地のつながりを分断しないように生活に必要な要素を配置し基本形としました。南北がつながる部分の屋根を柱で支持すると可変する際に制約となるので屋根は基本形のボリュームから県産材の杉の母屋で跳ね出す構造としました。
竣工時は、家族が暮らすため基本形のボリュームに出入口と、通り土間、ワークスペースをプラスした状態としています。プラスした要素は基本形とは構造的に分離され、基本形単体で積雪1m・耐震等級3を満たすようになっています。
また、プラスした要素の上部には1.8mの屋根がかかっているので軒下は容易に可変させることができます。敷地奥に増築するときにはプラスした部分を切り離して屋根のかかった半外空間にしたり、新たな用途のための空間に更新することができます。
この建築が、時を経ながら基本形部分を中心に、建築が大きくなったり小さくなったり、外とつながったり、どんどん変化しながら家族と街に寄り添っていく姿を見るのが楽しみです。